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為替と日本経済(上)揺らぐ円安歓迎論

2019/11/16日本経済新聞 『揺らぐ円安歓迎論』より


円安が日本経済に追い風になるというのは以前の定説。円安は輸出先での価格競争力が高まるため、輸出が増えて日本経済にはプラスとさていた訳ですが、製造業の海外移転が進み、日本からの輸出は価格に左右されにくい高級品中心へと移っています。また家電・エネルギーは輸入が増えており、これは円安が逆風です。


株式市場では円安を好感しますが、一方円安は円の購買力が下がって所得が海外へと流出します。これまでの円安神話を見すべき時が来たと始まっています。


産業関連表などからの分析によると、最近の日本経済にとっては、円安による負の影響が大きくなって来ています。


本記事の具体例では、対ドルで10%の円安になったと仮定し、外貨建てで輸出する商品価格の円換算が増えて売上が増加するプラス効果と、輸入品が値上がりして国内物価も上昇するマイナス効果を差引した結果、2015年は全産業の付加価値ベースで0.9%の押し下げとなっています。2000年に比べこのマイナス効果は約3倍にもなり、エネルギーなどの輸入が増え、円安によるコスト増となっていることが考えられます。


企業サイドの行動も一因だと考られます。円安を活かして輸出量を増やせば、日本のGDPにはプラスの側面がありますが、最近は円相場と輸出の関係も弱くなっています。

企業は輸出する商品で価格競争に巻き込まれるのを回避し、高品質で値下げしなくても売れる商品で勝負をしています。


例として挙げられていたのが「自動車」。トヨタも北米販売における戦略では、販売奨励金による値下げから高付加価値SUVの販売増が功を奏しているようです。

かつての日本のお家芸とも言われた電気産業の衰退も輸出を伸ばしにくくしています。

記事ではTVなど音響・映像系製品は13年から輸入が輸出を上回っており、賃金が高い日本では競争力がキープできず、円高局面では生産拠点が海外にシフトしていきました。製造業の海外生産比率は17年度に約23%、バブル期の30年前と比べて約10倍にもなっているようです。


逆に「輸入」の依存度は高まっていますスマホ等の電話機は年間約2兆円、東日本大震災後の原子力発電所停止に伴う液化天然ガスの輸入は増加11年には貿易収支が31年ぶりに赤字になっています。


最近の日本経済の構造は、「燃料の輸入増に円安のコスト増が加わって経済全体の負担感が膨らみやすい」との声もあります。


かつてのような「円安」は、今の日本経済の実態には必ずしも歓迎論一色ではないことに警鐘を鳴らしていました。

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