2019/09/20日本経済新聞 『おいしすぎては売れない』より
私のお気に入りコーナー「ヒットのクスリ」に思わず目が留まってしまった「おいしすぎては売れない」の文字。食品業界での「飽きない味」という例を引き合いに、非常に面白い
ビジネスのヒントがありました。
まず行動科学の本「好き嫌い」(早川書房)に「食べた記憶がうすければうすいほど、それだけ飽きがこないというわけである」と米軍の日常食についての一節があると始まります。
記憶がうすくなるとは逆説的ですが、実に上手い言い回し。
セブンイレブンジャパンの創業者:鈴木敏文さんは「高級料亭の料理でも毎日食べると飽きる」というのが口癖のようですが、7-11は一時的なブームで終わる刺激の強い味よりも、あくまでも万人受けする味をテーマにしています。決して奇をてらわず、常に材料・製法を変えながらジワジワと売り上げを伸ばすことを追求していると言います。おにぎり・パン・最近ではサラダまでマイナーチェンジを重ね、消費者が気付かないレベルまで品質改善に取り組んでいるようです。これぞ7-11流の「飽きない商品作り」、「記憶に残らない作り方」だとあります。いきなりの大ヒットではなく、数年後、消費者にいつの間にか定着していることを重視している。
食品業界でのもう一人の名経営者:安藤百福が創業した日清食品HDでは、現社長(宏基氏)の著書「カップラーメンをぶっつぶせ!」にその極意が記されていると。
創業者百福氏は常々「食品は美味しすぎてはいけない。少し余韻を残すと再購入に繋ぐことがでできる」と言っていたようです。いやぁ、伊藤氏・安藤氏のお二人とも何とも凄い名言です。カップラーメンの安藤氏は「濃い味で美味しすぎてしまうと『満足感』がありすぎると、当分リピートしない」とも指摘していたとされます。
またオリジン東秀創業者:安沢氏の「味覚哲学」は、病人でも毎日食べれる健康を考えた国民の基準食の創造とあり、この毎日食べても飽きない味は『うす味』で、『濃い味』は飽きてしまう、だからお客さまが自ら味をプラスできる程度がちょうど良いであったようです。
最後にビジネスにも通ずるとても良いヒントが、、、、。
食のベストセラーは「完成品」ではなく、時間をかけて育てるものである。多くのビジネスシーンでも、即効性のある画期的な企画がもてはやされますが、そんなものはめったに出てきません。今は海のモノとも山のモノとも評価が微妙で難しくても、徐々に着実に業界のスタンダードになるような、そんな地道な「飽きない商い(アキナイ)」を続けていくことが大事だと、気づかせてもらうとても良いトピックでした。
やっぱりこの「ヒットのクスリ」。時々なくてはならないナイスなコーナーです。
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