top of page

株価のモノサシ「PER」を再考する

2019/07/06 日本経済新聞 『株価のモノサシ PER』より


世界景気の先行き不安から、日本企業の業績見通しにも暗雲が立ち込めつつあります。そのような中でこそ基本に立ち返り、世界の株式に共通するモノサシ「PER」に考えてみるのが大切だという記事です。

時々出てくるこのPER(株価収益率)という指標は株価を1株当たり利益で割って求められ、株価が割高か割安かを判断する大切な指標です。

株価は将来の企業業績を織り込みながら動くため、1株当たり利益は過去の実績値ではなく、会社予想ベースの数値を用いることが一般的であるため、予想PERとも言われます。このPER水準は業種や個々の企業によっても異なり、業種が異なればビジネスモデルや業績の変動要因、利益水準や成長性も全く違います。ですので業種が同じかつビジネスモデルが近しい企業同士で、PERを比較し判断することが大切です。


業種別でのPERはバラバラで、例えば「石油産業」は、先行き業績が不透明で、投資家は業況悪化の可能性が高いと考えており、投資対象として人気がなくなっています。この石油関連企業の平均PERは約5倍です。またマイナス金利政策の長期化で、構造的不況を脱せずにいる「銀行業界」平均PERは約8.4倍程度。融資先企業の先細りや金利で稼げなくなっていることがビジネス環境を厳しくしています。逆に、業種別PERが高いのは「医薬品業界」で、平均で45倍を超えています。景気動向に左右されにくい収益環境が評価されており、投資家からは将来収益・利益水準が伸びてゆく業界と先行期待で人気化していることの表れです。事実、新薬開発や他企業との提携などのニュースがキッカケとなり株価が上昇するのは、将来的に中長期で利益の伸びにつながるとの期待が膨らむからでしょう。


さらにAI、ロボットやキャッシュレス時代の新決済システムなど、新しいマーケット開拓型企業PERが高く評価される傾向があります。時間軸での切り口も大切です。同一企業でも「過去」の水準と比べて割安・割高を判断するという見方です。数年前とほぼビジネスモデルが変わっていないのに、PERは株価レベルで大きく変わってしまうためです。記事では三井不動産の例を挙げ、5年前のPERは約30倍後半であったが、現在は約15倍台と半分以下になっているとあります。


最後に市場全体を測る場合は、指数ベースでの予想PERを用いるとあり、日経平均のPERは約12倍台2012年末以降のアベノミクス相場以降は約13倍~16倍のレンジを推移していました。しかし18年以降はこのレンジを下回ることが多くなってきており、日本企業の業績見通しが不透明感を反映していると思います。因みに海外市場とのPER比較では、米国が約18倍台、ドイツが13倍台であり、数値では相対的に低めの日本企業は、割安であるため、株価の回復を期待できるという見方もあるようですが。。。あくまでも業績の将来見通しを基に株価形成がなされ、過去、現在、未来とつながった中での、現在の株価で評価した指標であることを踏まえる必要があります。


さらに、日本企業といっても今やビジネスの主戦場を海外市場に置いている企業も多くなっていますので、グローバル企業群の中での、日本に本社がある企業という考え方も大事かも、、、と思います。

bottom of page