2020/12/22日本経済新聞『終焉迎える債券黄金時代』より 20年のマーケットも残り約1週間です。戦後最悪とも言える景気後退の中で、記録的な急回復を見せる株式市場に隠れて、もう一つの歴史に残る今年の出来事があります。40年続いた「債券黄金時代」の終焉です。 3月にFRBは遂にゼロ金利に踏み切り、昨年末に1.9%程度だった米国10年債利回りは3月、7-8月には遂にここまでとも言える0.5%台まで低下していました。この局面は「米国もついに日本化だ」とも言われていたのを思い出します。 米国債券市場は過去40年の黄金時代ともいわれる絶好の運用環境でした。1981年に15%を超えていた10年債利回りは長期下降トレンド(ということは価格上昇が継続)を形成、80年を起点として40年間のトータルリターンは1150%に達し、インフレ率を考慮しても、270%のリターンを投資家にもたらしました。 それが、、、今年米国金利は遂にゼロ付近まで低下、この意味するところは「これ以上金利が下がらず、債券価格は上がらない。利息収入もほとんどない」という、キャピタルゲインもインカムゲインも期待できない状況になっていくという事です。 日本や欧州のようにマイナス金利を掘っていくのであれば、債券価格の上昇はあるかもしれませんが、米国のFRBはマイナス金利政策は否定的です。ではリターンがない米国債は売却してしまおうという投資行動も簡単には取りずらい事情があります。これは個人投資家は保有しないという選択肢はありますが、機関投資家は過大なキャッシュを運用せずに保有することが許されない場合があるのです。債券価格は株価と負の相関があり、株式の値下がりを相殺する役割を期待されてきました。 独アリアンツの市場関係者は「投資家は株式60:債券40のポートフォリオを再考する必要がある」と来年の市場展望を伝えています。これは米国JPモルガンやスイスのPBでも「60:40のポートフォリオの期待リターンは低下してくる」とあちこちで言われ始めています。
この60/40ポートフォリオは年金基金や個人投資家に広く普及する伝統的なモデルポートフォリオともされていて、効率的に相対なリターンが高い組み合わせとされてきました。 事実、米国バンガードグループの1926~2019年の94年間で60/40ポートフォリオは平均9.0%のリターンで、株式100%のリターン10.2%に引けを取りません。(株100%よりはリスクをかなり低減できます!)
世界的な低金利とカネ余りで、株も債券も歴史的な高い価格での推移が定着すると、債券はもはや株式の下落を吸収できない可能性があります。リターンだけではなく、株とのシーソーゲームという分散投資効果も期待できないとなれば、投資先としての存在感を失う運命にあるとも言えると記事では指摘しています。 多くのリサーチでは、債券の代替資産候補は何か?というのが、来年のテーマとなって
います。 代替資産としての金・プライベートエクイティ、インフラ投資等の、株と違う動きをする文字通り「代替」の資産とは言え、巨大な米国債券市場での運用手段を失ったマネーの受け止めとしては、まだまだ小粒で役割不足であります。これまで安心してクッションとされてきた巨大な伝統資産の市場が消滅してしまったことは、投資家にとってとても厳しい運用環境になりそうです。 個人投資家には、キャッシュで待機という立派なストラテジーが残されていますが、株価がグングン上がる中では、自分の中での「投資したい」という感情コントロールが最大の課題となる21年でしょう・・・
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