2020/06/21日本経済新聞『上場企業 自社株買い急減』より 新型コロナの影響は上場企業の具体的な株主還元にも現れてきました。2020年4-6月期に
企業が設定する自社株買入れ枠は最大8961億円(19日現在)で、前年同期比78%減との
こと。
コロナ禍によって現金収入が減る中、手元現金の確保を優先している企業が多くなっています。株主還元策においては、自社株買いではなく、配当にて株主への一定の配慮を見せているとあります。 実際、今年度の配当予想を出した3月決算企業でも減配や無配は2割程度にとどまりました。 同日紙面きょうのことばに「自社株買い」についてのワード解説があります。自社株買いは、企業が発行済株式を買い戻すことを指し、配当と並んで企業の株主還元策(株主還元策は先日の記事にもあります)となっています。 市場から自社株を買い入れることにより、市場で流通する株数が減り、企業の貸借対照表上の資本が減ることにはなりますが、株式の需給が改善し、投資家が重視する一株当たり利益や自己資本利益率(ROE)が高まる効果が期待できます。 特に外国人投資家は株主総会での株主提案で「手元に抱える現金を事業への投資なに充てる予定がないのなら、自社株買いによって株主に還元すべきだ」と要求することも多くなっています。 企業が買い戻した自社の株式は、金庫株として保管し、それを使った株式交換での買収などの用途がない場合は消却することになります。 先ほど少し触れましたが日本企業は、自己資本利益率(ROE)が欧米企業に比べて低いことは依然から課題視されており、ROEを8%以上の目標に掲げた経済産業省2014年の伊藤レポート以降、自社株買いによってROE引き上げに取り組む企業が増えてきました。 米国企業では銀行借り入れや社債発行で調達した資金で自社株買いを行いROEを高める企業も多く、今回の新型コロナによる急激な業績悪化の中、株主の利益を優先するROE偏重の経営方針に批判が相次いでいます。 いくつかの外国人投資家にヒアリングすると、「日本企業は現金を抱え込み株主還元を軽視した経営はダメだと思っていたが、このような時のために、キャッシュリザーブを確保する危機管理はスバラシイ」という方もあり、何とも手のひらの返しようでした(笑)。 このコロナ禍を機に株主利益至上主義ではなく、様々な利害関係者:ステークホルダーへのバランスの取れた目配り経営が見直されてくることは確かでしょう。
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