• RYUICHI MOTOHASHI

史上初!WTI原油先物のマイナス価格…

2020/04/28日本経済新聞『NY原油先物、初のマイナス』より


先週4/20にNY市場の原油先物WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)5月物が史上初の「マイナス(-40ドル/バレル)」となりました。

コロナ対感染拡大を抑える経済活動が停滞し原油の需要が急速に減少していることもありますが、WTIの「決済手段も影響したものです。


この原油がマイナス価格で取引されるという異例な値動きの背景を紙面では

Q&A形式で整理しています。(以下そのQ&Aより)


Q1:何故WTIはマイナス価格になったのか?


A1:将来の期日に決済する取引としての商品先物であるWTIには、6月、7月等の月ごとに決済日が設けられ売買されています。4/21には5月物の決済日を控え、先物を買っている人はこの日までに先物を売って売却しなければ、原油そのものを引き取る必要があります。


原油の先物市場の参加者には、現物の価格変動による損失を抑えたい石油会社や製油所(こちらは実需家)、先物価格の上昇や下落で利益を狙うファンド等の様々な投資家がいますが、需要の急減によりWTI原油の受け渡し場所の貯蔵施設が満杯(ガソリンなど石油の需要がストップし在庫過剰になってしまっています)になるのが迫っています。石油業者以外の原油を現物で引き取りたくない投資家は決済日がどんどん迫ってくる中で、5月物の売却を急いで慌てて始めたのですが、貯蔵施設を手当てできない理由で製油所などの買い手がなかなか現れず、価格はマイナスになる(お金を払ってまで現物を引き取ってもらった)という異常なプライシングとなったのでした。



Q2:原油連動ETFやETN(上場証券)はどのような影響を受けたのか?


A2:原油ETFは保有する原油先物を基にして組成されるETF(上場投信)、原油ETNは裏付け資産(原油現物)を持たず金融機関が自らの信用力で発行する原油先物指数連動の債券を指します。

決済を迎える前に先物の乗り換えを進めた米国最大の原油ETF:USオイルファンドが新規発行を停止。クレディスイスは発行するETNの価値がゼロになったと発表しました。



Q3:先物ではロンドンに北海ブレント原油、東京にドバイ原油がありますが、いずれも

マイナスにはなっていませんが?


A3:WTIとは決済方法が異なり、北海ブレント、ドバイ原油は先物の買い手が決済せずに期日を迎えた場合、現物の引き渡しは行われず、先物が売られ取引が終了させられます

北海ブレントの6月物の決済は4/30に行われますが、現物交換の必要はないので、WTI5月物のような投資家の投げ売りによるマイナス価格という状態にはなりにくいと思われます。

Q4:実需家は北海ブレントをどのように使っているのでしょうか?


A4:石油会社は生産した原油を将来販売する際、原油安による損失を軽減するため先物市場に参加します。先物を売っておいて、決済日までに原油の現物に連動し先物価格が下がっていると、安くなった先物を買って決済することで利益が確保できます。

現物の損失を先物の利益である程度カバーすることが可能で、これが実需家サイドから見た現物価格下落のリスクヘッジ取引となります。



市場としての本来の機能を超えて、様々な思惑の投資家・投機家の参入や、レバレッジを効かせ資金を膨らませての取引、また原油という原資産からの派生した様々な金融商品の組成など、WTI独特の決済慣行に実需以外の様々な要因が重なって生じた異常な価格形成だったということだと思います。

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