2020/02/26日本経済新聞『物価揺らす2つの波』より
世界中で株安連鎖が急速に広がり、これまでカネ余りで過剰なリスクを取っていた投資マネーの逆回転もその株安を加速している感があります。新型肺炎はアジアの一地域から世界経済への問題と認識されるようになり、事態の深刻さも世界的規模で懸念されるフェーズに入ってきました。
この先の世界経済を考える上で、「2つの波」という大きな観点を考慮した方がいいとあります。需要の冷え込みからくる「デフレ圧力」と供給網の分断からくる「インフレの芽」、この2つの波のぶつかり方によって、経済政策・企業収益が左右されるのではないかとの示唆です。
コンテナ海運大手マークスの2/20の決算では、「中国の輸出は2月非常に弱い、3月相当弱い、だが4月、5月、6月はV字回復となると期待する」とのものでした。同社のような企業は世界のモノの流れ(こうした指標でバルチック海運指数があります)を敏感に感じています。この新型肺炎の影響で多くの運行を休止していますが、供給網が途切れたことによる世界的な完成品や中間製品在庫の品薄状態が発生しています。
ただこうした品薄在庫問題も、感染伝播がヤマ場を越えると物流は急速に戻るというのが、マークス社の見立てでした。しかし新たな世界的伝播が拡大しつつある直近では、このシナリオは不確実になっており、遂にイタリア・中東でも感染者が見つかると欧米の株価が急落、それが日本の株価にも襲撃となりました。これが新型肺炎問題が世界的株安になってきた経路だと思います。
英調査会社のリサーチでは、アジア以外での感染拡大が深刻になった場合、2020年の世界のGDPの成長率は1.3%押し下げられ、金額ベースで1.1兆ドルが消失と試算。消費・旅行が減退し、金融市場にも波及して来るとのシナリオ。
銅・原油相場が下落し、国際商品市況には懸念が出てきており、需要の減少によるデフレ圧力が高まってきています。逆に在庫品薄・枯渇状態が長く続き、供給網混乱が解消しない場合(すでに様々な部品や部材が供給不足気味といろいろな産業の経営者からお聞きします)中国に依存する製品の供給面の影響から、「局所的なインフレもありうる」と日系運用会社のFMのコメントも。
これまで各国が金融緩和に頼り切りになれた理由は、長らくインフレ圧力がなかなか出てこなかったからでもあります。
デフレとインフレのぶつかり合いは、この政策出動にも大きく影響するとあります。
こうした経済が上下どちらに行くか非常に不確実な中で、金相場の上昇は重要なサインにも見えると。金は株安への保険でもあり、思わぬインフレへの対応策として考えられています。米ダウ工業株30種平均÷NY金相場で算出した「ダウ・金倍率」は新型肺炎懸念以降、金優位の傾向が見え始めているようです。
最後はちょっと極端ですが、疾病の歴史で経済のひずみを考えてみるとあり、歴史的に不平等を是正した4つの要因の1つが「疾病」だとあります。
かつての働き手が足りなくなることにより、地主の収益が低下、平等化する効果があったと紹介。
時代は違いますが、大きなショックは我々の認識や行動を長期的に変え、マネーの流れも変わるキッカケになるという点からは、この新型肺炎問題は転換点となりうる災いかもしれないとも感じます。
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