2019/11/21日本経済新聞 『円の「低温相場」一段と』より
本日はマーケット俳句大賞※の作品から・・・
今年の外国為替市場の円相場は、昨年同様、値動きの乏しい「低温相場」になる模様。
2019年は/11/20までの値幅は8円30銭に止まっており、2年連続で過去最小を更新するかも
しれないとのこと。
米中摩擦、年後半からの米国の利下げなど、円高要因が多かったような気がしなくもないですが、結局のところ円相場の振幅は小さくなっています。
これまで日本のお家芸である「(超)低金利」が世界中での現象となり、金利差に着目した為替取引がめっきり少なくなったことが背景にあります。
2019年の米ドル円相場を考えてみると、年明け早々104円10銭と急激な円高(フラッシュクラッシュなんて言われています)に振れた後、年初来安値の112円40銭をつけたのは、「そろそろ米中貿易合意か?」と期待された4月の下旬。その後は「やはり合意どころではない!」と8月下旬に向けて円高傾向となり、104円台まで再度の円高。今、それが戻って108円-109円台を推移というのが大まかな流れです。
様々なリスク要因や期待感を行き来しながら、米ドル円は歴史的に見ても非常に小さな値動きに終始しています。
過去20円以上の振幅のあった「かつての円相場」が、かくも動かなくなった理由は
「世界的に『低成長、低インフレ、低金利』で内外格差が小さくなったのが一因」
と日銀幹部のコメント。
さらに生保系シンクタンクも「世界的な金利低下で円を借りて外貨買いのキャリー取引が減ったことも一因」とも指摘。
日米欧の主要先進国の政策金利は2007年1月の約4%程度から19年10月平均で0.6%と
約1/7に縮んでしまいました。
投資家の金利差を狙うキャリー取引→リスクを回避するキャリー取引解消での円買いによる「円高」が見られなくなったということでしょう。
こうした資金のフローだけではなく、日本経済の構造変化も大きいとあり、
かつて巨額の貿易黒字を抱えて、自動車等の輸出企業が輸出で稼いだドルを売って円を買う取引も多かったのですが、11年の東日本大震災後、エネルギー大量輸入に依存、現在の貿易収支はほぼトントン。円相場への影響は小さくなっています。
さらに、日本企業による海外工場の建設など、直接投資は19年に過去最高となりましたが、海外で稼いだ利益は海外で再投資されてしまい、国内に戻ってくることが少なくなりました。相場の動きが緩慢になると、短期の上下変動を狙う投機に近い投資家も円相場離れが進みます。
これは過度な円高等の為替変動を嫌う日銀や政府にとっては、歓迎すべき現象なのですが、
国際的な通貨取引量シェアが結構高い(恐らく10%程度はありますね)「円」という通貨の存在価値が低下するのは、長い目で見ると好ましいことではないと思います。
それくらい国の信認を表す通貨の価値は重いハズ。
だから基軸通貨ドルの米国は中国を、貿易摩擦で抑えようとしているのではないかなと思います。(私見)
※冒頭の俳句大賞は、中七(しち)ではなくて、、中八(はち)で、
かつ「季語無し」でした・・・・
お詫びにこちらも、、、
この円相場のトピック、、4月にも一度考えていました。
「不動の円相場は・・・」→こちら
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