• RYUICHI MOTOHASHI

過熱感と見放しを強める「ESGマネー」


2019/10/11日本経済新聞 『ESG銘柄に過熱感』より


株式市場において、昨今ESG(環境・社会・企業統治)をテーマに銘柄を選択する投資スタイルが広がりつつあります。しかし本来は持続的な企業価値向上を重視する長期投資としての新潮流であるにも関わらず、短期的な「ESGマネー」によって一部銘柄の割高化やブーム終了後の反動が懸念され始めているとありました。ESG縛りで銘柄選択の自由度がなくなり、一部銘柄への資金集中が起きつつあるようです。


例えば年初来で約2割上昇したキーエンスは、ESGに関連する世界のファンド構成銘柄では日本株で最もオーバーウェートとなっています。キーエンスの予想PERは31倍台と市場平均の約12倍程度を大きく上回り割高感がありそうですが、「割高だと思っても買うしかない」といった国内運用会社の声も紹介されていました。ESGマネーから見放された銘柄の株価低迷も見られます。発がん性の疑いありとされる農薬の国内販売権を持つ日産化学、年初から2割下げているJXTGホールディングスはPERが4倍台、JT(日本たばこ産業)は配当利回りが6%以上あっても株価は低迷しています。


国連の「責任投資原則」に署名した機関投資家の運用資産残高は80兆ドル(約8600兆円)を超えており、世界持続的投資連合調べではESGに基づく投資マネーは約31超ドル(2018年時点)と、この2年で3割以上増加しています。


米証券GSのレポートでは、マネーの急激な方向転換の懸念が指摘されており、世界全体でみたESGファンドがオーバーウェート(強気見通し)している銘柄の平均PERは市場平均を約4割上回っているとして、優良銘柄への資金集中への反動に注意としているようです。


運用会社各社でもこのESGに関する捉え方は様々で、

①企業の基礎体力を非財務状況から測る手法で、PER等で割高でも魅力的な銘柄は多いとの見方、②ESGは重視するが、伝統的指標で割高なら投資しない、過度に売られるのであれば投資のチャンスと考える見方、③ESGは長期的に生き残る企業を探す取り組みであり、一過性のブームで終わらないとする見方、等々それぞれの各社多様な考えが伺えます。


私は基本的な路線として、ESGやSDGsというコンセプトは社会が要請するとても重要な価値観であり、持続可能な企業活動を行う各企業にとっては避けては通れない経営指針になると思います。しかし、企業も利益を上げ世の中に付加価値を提供する活動を続けるためには、伝統的指標(PER、ROE等)もとても大切な考えに違いありません


私達は資本主義の中で生きていますので、「想いでっかち」だけでは、より豊かな暮らしが期待できなくなってしまいます新しい社会の価値観と伝統的投資指標のバランスの中で、今後の投資を考える時代になっていくと感じます。

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