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円高回避の伝家の宝刀は、、、「クジラ」の財布?

2019/08/29日本経済新聞 『円高忌避 秘策は「クジラ」?』より


米中の貿易摩擦による景気不透明感の中、FRBに対する追加利下げを迫るなど、米トランプ政権の異常とも言えるドル安誘導がとどまるところなく続きます。最近では米国政府が「ドル売り」の為替介入にまで踏み切るのではないかとの観測も出てきました。

これに伴う「円高」圧力の攻撃に対抗するため、日本政府は秘策として「クジラ」と言われる世界最大級の投資家:年金基金を出動させるとの見方まで浮上してきたという記事です。


昨今の市場は何と言っても、米トランプ大統領の不規則発言に翻弄されています。8/23日、中国の報復関税に追加関税をかけるとの発言に為替相場は大きく反応し、ドル円相場は1ドル104円40銭付近まで約7ヵ月ぶりの円高に到達。米政権は自国通貨安を通じ自国製品の輸出競争力を高めるドル安誘導を念頭に、FRBへの利下げ圧力を強めながら、一方で中国を意図的に通貨を切り下げる「為替操作国」に指定しています。以前は欧州中央銀行(ECB)に「金融緩和を通じた通貨安誘導だ」と不満を表明したこともあります。トランプの「非常に強いドルと非常に弱いFRBを持っており、双方に素晴らしい対応をしていく」というツイートは、なかなか利下げに踏み切らないFRBを捨て、ドル売り為替介入という直接的な手段の伏線かという専門家もいます。


過度な円高は輸出産業が多い日本の経済にはマイナスの影響が大きく、日銀が掲げる2%の物価目標実現もドンドン遠のきます。しかし、2011年を最後に発動を停止している財務相と日銀による円売り介入に期待するマーケット関係者も少数派です。そんなこと(円売り介入)をしたら、日米での物品貿易協定(TAG)交渉が大詰めなのに、米国を強く刺激してしまう。。。


そこで密かに期待されるのが、「クジラ」と称される年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の活用です。クジラの運用資産は現在約1600兆円、その基本ポートフォリオ(運用資産の資産構成割合)は、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%が目安となっています。


中でも注目は、19年6月末の運用額が約29兆円の外国債券とあり、構成比は基本目安を3%上回る18%に達しています。19年年初に104円台となる投機的な円高ドル安を受け、今春以降は円高推移となっています。円売りドル買いである外債投資は、大規模な円売りを伴うことで円高圧力を和らげる効果があるため、クジラによる外債購入で事実上の為替介入を行ったのではないかとの見方もあります。マーケットでは、この円高基調の為替市場では「更なる外債購入比率を高めて、20%台前半までとなるかもしれない」という声もあるようです。


安倍政権は2014年、債券中心であったGPIFの安定運用を見直し、株式比率(内外合算で)を50%までに引き上げる積極運用方針に転換、株価上昇=内閣支持率上昇へつなげる思惑が功を奏しました。今回は「クジラの外国債券」を舞台に、再びこうした展開が囁かれるのはあり得るシナリオかもしれないと記事は終わっています。


既にGPIFの外債への基本配分をオーバーし、更なる買い増しのノリシロはあまり残されているようには感じませんが、、、このような「クジラのお金を使って」のような話が出てくること自体、為替市場の動きに対抗する手段があまり残されていないことを表しているような気がします。


そもそもこの資金って。。政府のお財布なんではなく、私たちの大切な年金の財源なのですけれど。。。ね

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