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近くて遠い中銀と株価でも「波乱保険」は効くのか?


2021/06/07日本経済新聞『近くて遠い中銀と株価』より 米国株式の最高値更新が目前に迫る中、表の要因がワクチン普及による経済正常化であるならば、裏の要因はリスク尺度の変動率低下と言えると始まっている記事。ここには中央銀行のサポートによる「株安保険」の影がちらちらとしています。中銀との距離感がリスク資産の価格を左右する状況は、市場と当局の両社にとってリスクを孕みます。 米ダウ工業株30種平均が35,000ドルに迫る中、恐怖指数と言われる米VIX指数は低下傾向にあります。 このVIX指数株価の予想変動率を表し、新型コロナショックで跳ね上がって以降、落ち着きを取り戻したとは言え、20の節目を下回る状態にはありませんでした。昨今は市場が警戒していた金利上昇にブレーキがかかったのをきっかけに、急ピッチで低下、VIX指数は2018年~19年の居場所である15前後に接近する様は、市場のコロナ克服を象徴するように見えるとあります。とは言え、「波乱なく手放しでリスクを取れる」という状況ではないのは確かです。 実体経済も、巨額な財政出動・FRBの異常なほどの金融緩和で高まるインフレ懸念・各地で拡大しつつある変異株の発生等、まだまだ先行き不透明感が強いのも事実。こんな中でも投資家の警戒感が薄れているのは、「危機が起きれば中銀がプットをばらまき、金融システムの安定を守るという希望的観測」が一因と分析する運用者もいます。 プット=オプション取引での「売り権利」の事で、持っていると相場下落時に損失を限定できる保険のようなもの。昨今ではFEDプット、パウエル議長プット等、急落時に中央銀行が相場を支えてくれるという期待を示す用語も登場し、投資から「最後はFEDが何とかしてくれる」思惑でそんな言葉が出てくる頃には、FEDからはそういう甘えは幻想だと戒め風景がお決まりになってきました。 市場のデータは中銀との距離感が資産のリスクを左右する現実を映しているとあり、ハイイールド債はコロナ危機でFRBの買い入れ対象債券となり、「中銀の傘」に入って、昨年来の価格変動は08~09年の金融危機時に比べ格段に小さくなっています。稀に見る安定感・・・ そのFRBは6/2に買い入れ社債売却を開始すると表明、詰め過ぎた距離を正常化したいとの意図がありそうです。(日銀が長期金利の目標レンジを定める日本は国債の価格変動グラフはほぼ横一線で動きが全く?なし) 一方で「中銀の傘」に守られていない暗号資産(仮想通貨)は乱高下していて、既存の通貨システムからの独立を目指す存在ではあるものの、まだまだ通貨としての市民権を得るには超えるべきハードルがありそうです。 株式市場は暗号通貨ほど中銀との距離感が遠くはないとも言え、FRBが5月公表の金融安定性報告では「資産価格の急落」を深堀りして、低金利が株価を支える構図に警鐘を鳴らしました。金融システムまで影響が及んでくる株価急落は、FRBの守備範囲とも思え、株価を左右する金利は中銀の手の及ぶ場所(庭先)というスタンスでしょう。この辺りはETFを直接買入れする日銀とは異なり、金利というワンクッションを入れ株式市場と向き合うFRBの違いが出ています。 FEDは5月の株価変調は上手く乗り切りることが出来た印象ですが、今後はインフレ懸念が強まってくると、中銀と市場の対話が上手くいかず、金利と株価変動率が同時に跳ね上がるリスクは出て来そうだと記事は懸念していました。 株式市場と中央銀行は近くて遠く、パウエルプットという保険がいつまで効くのかも分からない、過度にあてにしてはいけないとの提言です。 過去のFRBと市場の蜜月「グリーンスパン・プット」の後には、経済を震撼させた金融危機が来てしまいました…あの時とはやや過熱感が違うとは思いつつ、歴史は繰り返すのが常でもありますので、ご用心。

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