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実質マイナス金利でのリスク資産投資:前編

2021/05/29日本経済新聞『リスク投資 近づく転機』より コロナ禍で進んできた世界的な株高には、FRBの金融緩和で実質金利のマイナス圏推移が定着し、強力にリスク資産投資を刺激してきたことがあると始まっています。 今後は経済正常化やFRBが金融緩和が縮小に向けた議論を匂わせこの構図も変化してくるかもしれません。市場展望にはマイナス金利の背景を掴んで、その流れを読むことが重要になりそうです。 世界の株価の動きMSCI全世界株指数(ACWI)は昨年3月より8割強の上昇。金融面から株高を後押しするのが基軸通貨米ドルの実質マイナス金利だとあります。 実質金利は通常目にする名目金利から市場の物価上昇の予想を差し引いて算出されます。インフレ率が名目金利を超えると実質金利はマイナスとなります。利息が増えるより物価が上昇するペースが速く、預けたままだとおカネの「価値」が目減りして(購買力が維持できない)しまいます。こうした状態を回避すべく、マネーは株などのリスク資産に動くことになります。 米国債市場での実質金利の把握は、インフレでも価値が減らない物価連動国債の利回りを便宜的に実質金利ととらえ、通常の国債利回り(名目金利)との差を「期待インフレ率」とされています。米10年国債の名目利回りは昨年夏から緩やかな上昇をしながらも、最近は1.6%前後で比較的安定。FRBはゼロ金利継続と大量の国債買い入れによって、名目金利を抑え政府の財政出動を支えてきました。 景気刺激の思惑から市場のインフレ予想は急速に高まり、実質金利のマイナス幅は一時1%前後に広がっています。米実質金利のマイナス定着はFRBが金融危機後に量的緩和を続けた2011-13年以来。今回のマイナス幅は当時を凌ぐほどです。 90年以前のインフレ期待のデータは乏しく、高インフレを経験した70年代前半の実質金利はマイナス3%前後と言われています。今回のような金融緩和局面での大幅なマイナス金利は半世紀なかったと言われています。 景気をふかしも冷ましもしない「中立金利」が長期の成長鈍化やコロナ禍でゼロまで下落したことが大きいようです。金融緩和の本質は実質金利を中立金利よりも低くする点にあり、緩和効果を出すためには、現状は実質金利をマイナスにするしかありません。この実質金利がマイナス圏を推移している中において、マネーはどのようにリスク資産に向かうのかは後半にしたいと思います。

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