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執筆者の写真RYUICHI MOTOHASHI

NY株、史上初の30,000ドル台のけん引役は、やはりIT企業…


2020/11/26日本経済新聞『危機下の株高 IT主導』より ここ数日毎日目にする「NY株、史上初30,000ドル到達」の見出し。NY株関連のトピックスをおさらいしてみます。 米ダウ工業株30種平均は11/24に史上初の30,000ドル台に乗せました。成長を加速する巨大IT企業がけん引する産業構造転換で、20,000ドルを付けた17年からわずか4年弱で1万ドル上昇。20年3月のコロナショック後、経済政策・緩和マネーの支えも相まって実体経済との大きなズレを生じながらもNY株は史上最高値を更新しています。 米国株の主役は5年ほどの周期で入れ替わってきたと言われます。 ダウ平均が初めて1万ドルに乗せた1999年はインターネットの普及でIT株がスポットライトを浴びました。00年代半ばは金融株、2010年前後はエネルギー株が市場の主役に。今回20年は再びIT株が台頭

ダウ平均採用銘柄のアップル、マイクロソフトに加え、アマゾン、アルファベット、ファイスブックの5社の時価総額は7.1兆ドル(約750兆円)と、日本株全体を上回る規模となっています。ダウ平均が2万ドルから3万ドルは50%上昇する間に、5社の時価総額は約3倍に膨らんでいます。 米国株全体に占める割合も17%とメガテックに一極集中 しかし株式市場全体からみると、コロナショックは2つの面を生んだと言われ、7-9月期決算では「ワースト」と「ベスト」の混在とも言われています。アメリカン航空他航空大手3社では計1兆円規模の赤字を計上、一方マイクロソフトの利益は1.5兆円規模と最高水準。需要が一瞬にして消え急に苦境に立たされる企業の一方、巨大IT企業は急速なデジタル化の波に乗り、新しいサービスを投入し業績好調です。 また昨今の株高の背景には、株式市場に流れ込む大量の投資マネーもあります。この春、コロナ感染拡大で都市封鎖や人の移動ストップで経済がマヒ状態となり、日本含む主要国の株価は一時3割を超える急落となりました。この危機状況を打開すべく、世界的に財政支出が打たれ、その総額は10兆ドルとも言われています。金融緩和によって市場にマネーが流れ込み、3月の下げ幅を超える急上昇という事になったわけです。 この緩和マネーに支えられた株高は、実体経済とのズレを生んでいます。約10年前まで、米国株の時価総額と米国のGDPはほぼ近い水準でしたが、徐々に差が開き、20年経済がマイナス成長下での株高によって、時価総額はGDPの2倍超まで拡大してしまっています。 株価を1株あたり利益で割ったPER(株価収益率)は22倍と過去20年で最高水準。特にIT企業では利益水準に比べて株高が進んていることから、株価は割高と言われています。 米国では株価の上昇は含み益が膨らみ、消費の追い風になる資産効果が期待されますが、実際には株高の恩恵が偏っていて、果実が一般市民にあまねく波及しずらいとも言われています。 FRBによると、米国民を資産階層で分けると上位1%が全体の半分強の株式・投信を保有し、下位50%の保有額は1577億ドルにすぎないとされています。紙面ではこれは、アマゾン創業者:ジェフ・ベゾス氏1人の資産額を下回るとも・・・。 最後に危機は新しいイノベーションを生み、企業の変革のチャンスだとありますが、今回はこの株高の裏には、債務膨張と緩和マネーの依存度が高すぎる点が指摘され、これを解消できない限り、経済社会のひずみはより大きくなっていくかもと、警鐘を鳴らしながら終わっています。 コロナ共存社会というのは、もはや誰も抗えない新しい社会常識となると思いますが、もはや常態化しつつある株式市場での富の一極集中という状態は、その逆回転時に非常に怖い感じすらします。

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