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米国金利上昇からの二つの資産への影響


2020/08/12日本経済新聞『バリュー株逆襲の芽』より 同、『金急落、一時1900ドル割れ』より 今週は米国の金利の変化が、二つの資産に大きく影響を与えたと思います。

二つの資産とは株式です。 8月以降の株式市場では投資家の物色動向に大きな変化が出てきており、グロース(成長)株一極集中だったのが、バリュー(割安)株が買われ始めています。ついに長期に渡ってグロース株に劣後していたバリュー株の逆襲が始まったのか?と記事ではあります。 グロース株とは、高い利益成長を続ける銘柄で、PERやPBRなどの指標で見たバリュエーションが割高でも許容されます。業種ではテクノロジーや医薬系にグロースが多く存在します。逆にバリュー株は本来の企業価値に比べて株価が割安に放置されている銘柄をいい、自動車、銀行や商社などが代表格です。 日本では2017年半ば以降、グロース株がバリュー株のパフォーマンスを上回る状態が続き、「バリューは死んだ」などと言われたこともありました。それが、今月に入りグロース株からバリュー株へと投資家の物色対象が転換。(実際、今週8/11からの週は自動車や銀行株はずっと高く終わりました。) この最大の原因は米国金利のリバウンドだと思われます。実は金利とグロース株のバリュエーションには反比例の関係があり、金利が下がって低いうちは、グロース株の将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率が下がるため、グロース株の高い株価が正当化されることになります。それが8月上旬に米国10年債利回りが、0.507%を底に、11日には0.668%にまで上昇、これを境に投資家は米国IT大手をはじめとする世界のグロース株を売却し、利益確定を始めたのでした。 バリュー株が反転したのは、企業業績の下げ止まりへの期待もあります。4-6月期が業績の底になるという想定がかなり確信度が高くなり、業績底入れ局面ではバリュー株が買い戻りやすいということも後押ししているのでしょう。ただし、このグロースからバリューへの選手交代が一過性ではなくどのくらい長く続くのかについて、多くの投資家はとても興味深々ではないでしょうか?私も以前からご提案してきた運用力に定評が高いバリュー系の投信も暫くパフォーマンスに苦しんでいるので、この動向はとても気になるのです。 そしてもう一つ、忘れてはならないのはです。過去最高値圏で推移してきたNY先物の金は12日の時間外で急落、一時1トロイオンス1900ドルを割り込んでしまいました。この急落幅は約5%弱程度あり、3月中旬から下旬の総資産が換金売りされたコロナショック時の下落に近い急落でした。 やはりこの原因も米国10年債利回りの上昇に端を発しています。これまで低金利下が続く中で、利息が付かなくても、基軸通貨に代わる無国籍通貨であり安全資産としての金という存在が根強い人気であったのが、金利の急上昇で「!」となったのでしょう。 この金の下落は、これまでずっと上昇してきた反動の調整側面を指摘する方が多いようです。


今回は株式市場と金価格が際立っていますが、金利上昇が様々な資産に及ぼす影響については、これから複眼的に考えて頭の体操をしておく必要があります。

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