2020/07/01日本経済新聞『マネー、原油・米国株に』より 2020年4-6月期は世界の金融市場における資金の動きに典型的な流れが見てとれます。それは一言で言うと「リスクオン再び!」。 各国の大規模な財政・金融政策に加え、経済活動が再開したたことで、投資家が再びリスクをとり始め各資産に投資を始めたことが伺えるとのこと。3月下旬のコロナショックでとにかく現金にしておきたいとリスク資産から流出していた投資マネーも徐々に資産市場に戻っています。 特に最も上昇が大きかったのは原油でNY市場のWTI原油先物は3月末比で9割強上昇。産油国が大幅減産に動き、消費国での需要回復も価格上昇への好材料となったようです。コモディティアナリストも「在庫は圧縮に向かい7月以降も緩やかながら上昇になりそう」と強気の見方です。
世界の株式市場でも最も好調なのは米国株で、S&P500は18%高となり、特にコロナ感染拡大で、人々が外出を控えても業績堅調が期待されるハイテク株が上昇をけん引しています。日経平均も同じく18%高と欧州・香港を上回る上昇、「日本は比較的感染者が少なく抑えられており、コロナのダメージが比較的浅い」のが要因という専門家の意見もあります。 新興国株式市場も、感染者こそ遅れて増加傾向にありますが、「先進国株の物色一巡後、遅れて資金流入の結果、株価は堅調」というストラテジストもいます。 また米FRBは3月以降、利下げや低格付けまで買い入れるという社債市場への流動性供給に動き、日銀もETFの買い入れ額の増加を決定、こうした政策は暫く続きそうといった見方は多くなっています。 このような市場での資金余剰が続く状態が、投資家のリスクオン姿勢を後押していると思われます。一方、安全資産と言われる金も買われており、東京商品取引所の金先物価格は約1カ月半ぶりに最高値を更新しました。ある専門家は「株高の持続力は怪しいと考える投資家が多く、株価急落に備える保険としての金のニーズが強い」ことの表れだとしています。 勿論投資家の中には、コロナの感染が再度拡大してくることを警戒(だから金での保険をかけているとも言えるでしょうが)しており、事実、米国の一部では経済活動を再度いったん停止する州もでてきました。 こうした懸念が強まり、リスクを取り始めたリスクマネーが再度逆回転し、リスク回避を始めてしまうと、せっかく動き出した経済活動、金融市場に冷や水となりかねません。 ここが連日紙面でも目にする、「実体経済と乖離する株高」、「感染第二波をどこまで見込んだ経済予測をどうするか」という議論で大切な前提になってくるのかと思います。まだまだVIX指数も落ち着いてきたとはいえ、30台を安定的に下回る状況になっていないことに表れているような気がします。 ※個人的には原油に資金が向かうということにどうも違和感があります。
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