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執筆者の写真RYUICHI MOTOHASHI

ステークホルダー資本主義時代の「株主還元」の行方


2020/05/30日本経済新聞 きょうのことば

『株主還元 配当と自社株買いで構成』より


コロナ禍によって、突然経済活動がストップし、企業の意思決定にも大きな転換が迫られています。まさに「株主還元」もその1つであり、企業は経費や税金などの支払いを済ませた後、残った最終利益や過去に蓄積した利益などを原資に、どのように株主に配分してゆくか問われていくことになります。


株主還元には、現金を直接株主に支払う「配当」と、発行済株式を自社で買い取る「自社株買い」の2つがあり、これらを合わせた金額が株主還元の総額となります。


これは企業が「どの成長段階にあるか」によって異なるケースが多いと思います。


企業が稼いだ利益の使い道として、

成長段階の企業は設備投資やM&A(合併・買収)といった成長投資に回すことが多くなり、成熟企業は自社株買いや配当支払いで株主に報いようとする傾向が強くなります。


共に企業内に余剰資金が膨らむことを抑え、資金効率を高める狙いがあります。

日本企業にも多くの資金を投資する外国人投資家を中心に還元強化を求める声は強く、

株主還元に積極的な企業が多くなりました。


※昔々は事業会社の大株主は、取引先企業やメインバンクである銀行のパターンが多く、

株主としてそれほど口うるさく企業活動を監視しなかったのでした・・・まさにこの株式相互持合い構造こそ昔の日本企業の象徴的経営だったのです。

(そして私の大学の卒論テーマでした)



ただし過剰な株主還元は、賃金が増えず設備投資にも資金が回らなくなります。


欧米では株主第一主義を見直し、19年8月には米主要企業の経営者団体:ビジネスラウンドテーブルでは、株主だけではなく、従業員・取引先や消費者などの株主以外のステークホルダー(利害関係者)に利益を配分する責任があると声明が出されました。


今後の企業の資本政策において、利害関係者全方位の利益を意識した「ステークホルダー資本主義」はますます重視されていくと思います。

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