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何故、リスク回避でも円安が続くのか…

2020/03/19日本経済新聞『崩れる「リスク回避の円高」』より


外国為替市場では、これまでの「リスク回避の円高」という長らくのセオリーが変調を来しているとあります。世界的な株価の乱高下や円高・ドル安要因とされてきた日米金利差が縮む中にあって、円相場は比較的「円安水準」のまま推移しています。


この1ヵ月あまり高い相関を保ってきた金利差とドル円相場の関係も変わってきており、この原因は景気先行き不透明感に裏打ちされた強いドル需要ではないかとあります。


コロナ感染拡大を受けて米国NYダウ平均はこの1ヵ月で約3割下落、原油などのコモディティ価格も軒並み下落となっていますが、こうしたリスクオフ局面においては、投資家は安全資産とされる円を選好し、円高・ドル安の流れになることがいつものパターンです。


実際、2008年のリーマンショック時は1ヵ月あまりで、1ドル105円台から90円近辺までの急激な円高進行が見られました。さらに今回は、日米金利差が著しく小さくなっています


通常経済時の投資家は、ドルを調達し金利が相対的に高い米国債等で運用することが多いため、米国金利の低下=投資魅力が低下し、ドル買い圧力の弱まり、円高・ドル安につながるという経路となります。


年初には約2%あった日米金利差は3月初旬には1%未満にまで小さくなり「過去にも例のない水準にまで縮小(みずほ銀唐鎌氏)」しているようです。この状況でも円相場は107円台(3/19の13:25時点で109.28)と、1カ月前の110円付近とほぼ同じレベルで推移。


3月上旬にほんの一時、101円台まで円高に振れたのですが、その後はすぐに円安方向に逆戻りしています。


記事では2/19-3/12までは、日米金利差とドル円相場には明確な相関関係があったものの、「直近では明らかに円安方向(JPモルガン・チェース銀)」「金利差から見て100円超の円高でもおかしくない(みずほ銀)」と市場のプロも違和感を感じているコメントがありました。


円高が進行しない原因・・・最大の理由は強い「ドル需要」とあり、企業の間ではどこまで波及するか影響度が分からないコロナ感染による手許資金手当ての需要、金融機関では株価下落による投資ファンドの解約・換金への準備需要の急速な高まりです。


以前の経済状況では低金利の通貨(円やスイスフラン)で調達した資金で、高金利の通貨(豪ドルや米ドル)を買い金利差の収益を稼ぐ「円(瑞)キャリー取引」が活発となり、

そのポジションが市場混乱時に一気に解消されることにより、円高圧力となって顕在化したのです。


※かくいう私もリーマンショック以前は「こんなにもカンタンに収益が稼げるものか」とキャリー取引は盛んにやりました!


また世界的に進む低金利の影響も・・・とあり、リーマンショックを境に世界の中銀は大規模な金融緩和を行い、円以外の通貨(例えばユーロ等)でも低金利通貨が増えたことから、円キャリー取引自体が下火となり、当然ながら巻き戻しも少なくなってきました。


とは言え、、、

この円安水準が定着するかは不透明ともあり、今の今は「非常事態」でドル現金需要が急激に高まってはいますが、このコロナ感染騒ぎが終息に向け、経済の正常化と再び日米金利差が意識し直されてくると、100円台前半の円高はあっても不思議ではありません。


連日の世界連鎖株安の中で、とにかく国債も金ですら売れらる中で、ドル現金しか信じられなくなっているこの状況は異常事態であり、早く適正な経済活動の回復を強く願います。

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