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株式市場だけじゃない…新型コロナが上陸するもう一つのアブナイ市場


2020/03/03日本経済新聞 『低格付け債ファンド、強まる逆風』より


新型コロナショックで投資家が警戒しているのは、これまで割高感があった株式だけではありません。デフォルトリスクが高いハイイールド債(低格付け社債)にも警戒感が高まっており、こうした債券を組み入れたファンドを解約する動きが広がっているようです。


2/26までの1週間に68億ドル(約7300億円)の資金が流出したと言われ、18年2月以来、約2年ぶりの流出の大きさになっています。このHY債はエネルギー関連企業の発行が多く、新型コロナ感染拡大、原油安が嫌気され打撃となっているようです。

社債発行需要の減退が企業の投資抑制となり、景気後退になりかねないと記事は危惧しています。


米メディアによると2/25はブラックロックの資産総額最大の低格付け債ファンドで解約が殺到、1日当たりの流出額が過去最高にまで膨らんだようです。

新型コロナ感染拡大は、これまでのあり余るマネーの逆回転のきっかけとなってしまったようです。


年金基金・保険会社などの機関投資家は長引く低金利での運用難から、高い利回りが見込める低格付け(HY)債ファンドに多くの資金を投資していました。ETFという容易に取引ができる投資商品を通じて、返済不能に陥るかもしれない本来は投資リスクが高いHY債に個人投資家も資金を振り向けていました。


投資リスクが高いものに資金が集中してきた結果、ショックで投資家が一気にリスク回避行動をとると、集中していたマネーが一転して流出し始めます。


新型コロナ感染拡大⇒景気減速懸念⇒原油価格下落は、シェールガス生産会社等のエネルギー企業が発行しているHY債市場で、急速に企業業績悪化による債務不履行のリスクが意識されたようです。

※2/28のWTI原油先物価格は一時43.85ドルと18年12月以来、1年2か月ぶりの安値でした。


投資家のリスク回避行動で、低格付け債の需要が減少し、対国債(リスクがないとみなされる債券)比で上乗せ金利をより多く乗せないと(つまりより高い金利の支払いを約束しないと)買手が見つからなくなり、企業の資金調達環境は悪化していきます。


こうした企業の資金調達コストが急上昇すれば、設備投資や企業買収のセーブや資金繰りの悪化につながりかねません。


新型コロナ感染拡大に終わりが見えないと、投資家もリスクを取りづらくなり、当面は現金で待機するか高格付けの債券へ資金を振り向ける投資家も増えてくると思われます。


特に低格付け市場が大きい米国内での感染拡大が現実味を帯びてくるかが、今後の投資マネーの行方を左右すると考えられます。


これまでの低金利下での長きに渡る米国景気拡大の中で、企業債務はドンドン膨らみ続け、過去最高にまで膨張しています。このパンパンな巨大債務風船は「コロナショック」でも無事終息できるのかは、日々大きく乱高下する株式市場とは異なる懸念材料だと思います。

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