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債務超過でも株主還元で、株式市場は更なる延長戦へ…


2020/02/14日本経済新聞『米社、株主還元で債務超過』より


これも時々繰り返される定点観測が必須のトピックスです。

米国の著名企業に債務超過企業が増加しています。2019年にはスターバックスやボーイングが加わって、債務超過額合計は650億ドル(約7兆2千億円)と金融危機時の08年以来の高水準と言われます。


この背景には、低金利での借入金を使い利益を上回る自社株買いや配当を実施、資本を取り崩している企業行動があります。


米国企業は稼ぐ力が強いとはいえ、株主還元に傾斜した財務戦略は金融環境の変化によっては、経営不安に陥る危険を孕んでいると警鐘を鳴らしています。QUICK・ファクトセットの集計では、19年度の米主要企業500社中、24社が債務超過となり、08年の17社を上回る勢いで増加中のようです。


「737MAX」運航停止となったボーイングは19年12月期は6億ドルの最終赤字でも、46億ドルの配当、26億ドルの自社株買い等の株主還元策を実施。


スターバックスは19年9月期に初の債務超過へ、マクドナルドは19年12月期に82億ドルの債務超過となりましたが、両社とも自社株買いと配当の合計額が純利益を大きく上回っています。


米国企業ならではの企業行動だなと思うのは、財務の健全性よりも利益を株主に還元する意識が強い点、経営陣の報酬が株価上昇に連動して上がる仕組みが採用されることが多い点があります。ここ過去数年の株価を重視する利益配分が強まる傾向です。


米国ならではの金融機関の融資態度もあります。日本の銀行は債務超過企業には融資の提供が厳しくなりますが、米国では債務超過=即経営不安とは判断されず、収益から投資額を差し引いたフリーキャッシュフロー(純現金収支)が黒字であれば、銀行から借金の返済を迫られるということはあまりありません


企業の財務行動を後押しするのは、歴史的な低金利環境と世界的なカネ余り状況の持続です。20年1月期の米社債の平均金利は2.64%と過去最低を更新、先のスタバやマクドナルドも19年には、3%台の金利で30年債を発行しています。


米国主要企業500社(除く金融)の負債は19年末に5兆330億ドルと、前年比で6130億ドル増え、増加額は過去最大。米企業の自己資本比率は34%と08年金融危機時以来の低水準となっています。


「借入金」という、株式より低コストの資金調達は、収益拡大の可能性を高めますが、金利負担が増加し、借り過ぎによる経営不安や急激な金利上昇による資金繰り悪化という事態が生じると、経営破たんが頻発し、事業会社発の信用不安となる可能性もないとは言えないと感じる少し怖い記事です。


米国企業の中には、「当面は本業への前向き投資はないけど、低金利だから今のうちに沢山借金しておこう。そのお金の使い道にも、株主がウルサいから配当と自社株買いでもしておけば文句が出ないだろ」とか考えている経営陣もいるかも知れない・・・


この風潮の中での米国企業の平均PER(株価収益率)18倍超という過去平均レンジの上限付近は、かなり怖いながらも、カネ余りの投資家は米国株式市場の更なる上昇という延長戦に

入っている気がしてならないです。

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