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執筆者の写真RYUICHI MOTOHASHI

市場混乱リスクの「第2波」は新興国からの資金流出か?


2020/05/03日本経済新聞『新興国 止まらぬ資金流出』より 新興国からの資金流出に歯止めがかからない状態となっています。 4月末までの100日間で流出した域外マネーは約1000億ドル(約10.7兆円)となっているようで、このペースはリーマンショック時の約4倍に達したとあります。 主な理由は新型コロナの感染拡大に対処するために各国とも急速な財政悪化が懸念されているためです。急激な通貨安で新興国のドル建て債務負担はさらに大きくなっています。 日米欧の中央銀行による大量資金供給により、金融市場は落ち着きを取り戻しているように見えますが、新興国が火種となって新しい経済危機となる可能性も残されているかもしれないと懸念しています。 中国で新型コロナ感染拡大が本格化した1/20を起点に4/29までの100日間の資金流出累計額を国際金融協会が算出したところでは、1000億7000万ドルに達したようです。

100日間の流出ペースを過去と比較すると、2008年のリーマンショック時、約236億ドルの約4.2倍、15年のチャイナショック(約95億ドル)の約11倍で今回のコロナ禍の影響の甚大さを映しています。 急速な資金流出は新興国通貨の相場急落につながっており、19年末比の対ドルでの落ち込みが最も大きかったのが、ブラジルレアル(約27%下落)で、4月の下旬には最安値を更新してしまいました。25%下げた南アフリカランド、15%安のトルコリラも最安値圏となっています。これは、新興国の財政持続性への懸念が高まっていることが背景です。

コロナショックで民間需要の減少とそれを補う経済対策や医療体制の整備などで、財政支出は大きく膨らんでいます。マレーシアではGDPの18%に当たる対策を打ち出し、インドネシアは1997年のアジア通貨危機の再発防止で設けた財政規律ルールを一時棚上げしたとあります。 IMF予測では、新興国の20年の財政赤字がGDP比8.9%とされ、半年前予測の1.8倍に急拡大しています。インドネシアや南アは同比率が過去最大となっています。 米格付機関のS&Pグローバルレーティングは1月以降、20か国の信用格付けを引き下げ、中期的に格下げ予備軍も15か国あるようです。これは欧州債務危機で信用不安が広がった11年以来の多さとなる可能性がるとしています。 信用リスクが高まれば債務返済への懸念が持ち上がり、国債金利が上昇する悪循環になる。エクアドルは原油価格急落で財政が行き詰まり、事実上のデフォルトとなってしまいました。 記録的な水準にまで積みあがった新興国の借金は、景気悪化に向かう世界経済の中でネガティブな材料となりえます。国際金融協会によると、政府・民間を合わせた負債は71兆ドルと過去最大で、GDPの2.2倍にもなる。この比率はリーマンショック前の07年でも1.5倍弱だといわれています。この負債の1割程度は米ドル建てで、新興国通貨安は米ドルで支払う利子や元本の負担が大きくなることを示しています。 日米欧をはじめ、世界の中央銀行が巨額の資金を供給したり、企業の発行する社債(格付の低いハイイールド債も含む)を買い入れる「何でもアリ」な経済下支え策を打ち出しても、世界経済の成長をけん引しつつあった新興国群が市場混乱の「第2波」となる懸念が燻っていると、神経を尖らせるべきリスクを提唱していました。

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